平成24年度SJS患者会総会講演記録

目次

SJS患者支援研究班講演

研究班講演2:鹿庭なほ子(国立医薬品食品衛生研究所医薬安全科学部)

●副作用について

国立医薬品食品衛生研究所の医薬安全科学部に勤めております鹿庭と申します。今日はお招きいただきまして、ありがとうございます。始まる前に、私の家族のことで恐縮ですが、私自身はあまり野球を見ないのですが、夫が大変なカープファンでございまして、今日ここで高橋選手とご一緒にお話しできることを大変羨ましがっておりました。

さて、副作用は、大きく二つのタイプに分けることができます。一つは、薬の効果・活性の延長上で生じる副作用です。効果の延長上で起こる副作用は、例えば、高血圧の薬を飲んで血圧が下がりすぎたとか、あるいは糖尿病の薬で血糖値が下がりすぎたというようなものです。また、薬理活性の延長で起こる副作用は、例えば、痛み止めを飲むと胃腸障害が起こるとか、抗がん剤を飲むと下痢や骨髄機能の抑制が起こりますが、これは薬の活性を考えれば、そのような副作用が生じることが初めからわかります。このような副作用は、オーバードーズ(過剰投与)になれば、誰にでも発生する副作用です。もう一つが、薬の効果・活性とは全く無関係な副作用、つまり薬を効かせたい場所とは無関係なところで発生する副作用です。これは、比較的まれにしか起こらない副作用ですが、重篤化することが多いために、患者様、医療関係者、製薬企業にとって悩ましい問題です。SJS/TENはこのようなタイプの副作用に属します。

SJS/TENのような副作用は、今までは薬を飲み始めて発症するまでわかりませんでした。しかし、もし、治療を開始する前に患者さんの生体成分を調べて、重症薬疹を発症しやすいかしにくいかの体質を識別することができれば、医薬品を安全に使うことができるようになります。こうした生体成分を、バイオマーカーといいますが、バイオマーカーとして遺伝子のタイプを調べる場合には、それを遺伝子マーカーといいます。

●カルバマゼピンとアロプリノールの遺伝子マーカー

2004年ごろから重症薬疹の遺伝子マーカーが報告されるようになりました。カルバマゼピンは、SJS/TENを発症しやすい薬として有名です。台湾に住む中国人を対象にした研究では、カルバマゼピンが原因でSJS/TENを発症した患者さんのうち、HLA-B*1502という遺伝子のタイプを保有していた患者さんは、60例中59例ありました。それに対して、カルバマゼピンを飲んでもSJS/TENを発症しなかった患者さんのうち、HLA-B*1502を保有していた患者さんは、144例中6例だけだったことが報告されました。

もう一つ、SJS/TENを含む重症薬疹を起こしやすい薬に、アロプリノールがあります。これも台湾に住む中国人を対象にした研究ですが、アロプリノールを服用して重症薬疹を発症した患者さん51例のうち51例、つまり100%の方がHLA-B*5801というタイプの遺伝子を保有していました。その一方、アロプリノールを服用しても重症薬疹を発症しなかった患者さん135例のうち、この遺伝子を保有していたのは20例に過ぎませんでした。

●HLAの遺伝子について

先ほどからHLA-Bの何々という言葉が出てきていますが、ここでHLAとHLAの遺伝子についてお話ししたいと思います。

HLAというのは、免疫に関与するたんぱく質のことです。HLAには、HLA-AとかHLA-B、Cなど、構造の似たたんぱく質がたくさんあります。このHLAというたんぱく質の設計図が、HLAの遺伝子です。

ヒトの身体は、たくさんの細胞から成り立っていますが、遺伝子は、一つ一つの細胞の核の中にある染色体の上に乗っています。ヒトの染色体の数は、常染色体が22対と性染色体が1対あります。HLAの遺伝子は、この6番染色体の短い腕の真ん中あたりに並んでいます。

HLAの遺伝子は、多様性に富んでいて、たくさんのタイプがあります。例えば、HLA-Bというたんぱく質を設計している遺伝子は、これまでに千種類以上のタイプが存在すると報告されてきました。それらを識別するために、設計するたんぱく質であるHLA-Bの次に、アスタリスクを付け、その次に数字を4桁付けて表示します。これによって、いろいろなHLAの遺伝子のタイプを識別します。

その中で、HLA-B*1502がカルバマゼピン誘因性SJSと関係し、HLA-B*5801がアロプリノール誘因性重症薬疹と関係し、HLA-B*5701がアバカビル誘因性重症薬疹と関係するということが分かってきたわけです。ヒトはお父さんとお母さんから遺伝子を1本ずつ引き継ぎますから、たまたま引き継いだHLAの遺伝子の中にこのような遺伝子を引き継いでくることもあるということです。

●遺伝子マーカーは、万国共通か

それでは、重症薬疹の遺伝子マーカーは、万国共通でしょうか。

HLA-B*5801は、アロプリノール誘因性の重症薬疹のマーカーです。先ほどは漢民族の話をしましたが、タイ人でも100%の患者が保有していることがわかりました。ですから、漢民族とタイ人にとっては、HLA-B*5801は、大変よい遺伝子マーカーということがいえると思います。

HLA-B*1502は、カルバマゼピン誘因性のSJS/TENのマーカーです。先ほどは中国人の話をしましたが、インド人、タイ人、東南アジア出身のヨーロッパ人のほとんどの患者さんがHLA-B*1502を保有しています。ですから、この人たちにとっては非常によい遺伝子マーカーということができます。

では、白人ではどうなっているでしょうか。アロプリノール誘因の重症薬疹の白人の患者さんを調べてみますと、HLA-B*5801を持っている方は、27人中の12人しかいませんでした。東南アジア人では遺伝子マーカーの保有率100%でしたが、白人では半分ぐらいです。それでも、HLA-B*5801は白人にも何とか役に立つとは思います。一方、カルバマゼピン誘因性のSJS/TENの白人の患者さんの中で、HLA-B*1502を持っている方は、今まで1人も確認されていません。ですから、HLA-B*1502は白人の方にとってはまったく役に立たないマーカーだということができると思います。

このように遺伝子マーカーは決して世界共通ではないことがわかってきました。

●研究班について

それでは、日本人は、どうでしょうか。私どもでは2006年に、日本人の患者に有用な遺伝子マーカーを探すという目的を掲げて、SJS/TENの発症を防止するための遺伝子マーカーを探す研究班を立ち上げました。私どもは薬剤師が中心の研究班ですが、ゲノム薬理学が専門の先生、皮膚科の先生、外園先生・上田先生などの眼科の先生、薬を処方する側の神経内科の先生の協力を得ています。3年間は厚生労働科学研究の研究費でまかなってきました。現在、厚生労働省の安全対策課は、重篤な副作用の予防に力を入れていまして、私どもの研究班も、厚生労働省から支援を受けて研究を継続しています。

どのような手法で研究しているかと言いますと、まず、SJS/TENを発症した患者さんとその主治医の先生にご協力いただいて、血液を提供していただき、そこから抽出したDNAを用いて遺伝子のタイプを調べます。もう一方で、これまでに(恐らく)SJS/TENを発症したことのない日本人の集団3千人の志願者の遺伝子のタイプを調べます。このようにして、SJS/TENの発症者に多いHLAの遺伝子のタイプを探しています。

その結果、日本人のカルバマゼピン誘因性SJS/TENの患者さんには、中国人に見つかった遺伝子マーカーであるHLA-B*1502を持っている方は一人もいませんでした。しかし、それによく似たHLA-B*1511を持っている患者さんが、かなりの数いました。それから、これは狩野先生のグループのご発表ですが、日本人では、カルバマゼピン誘因性SJS/TENとHLA-A*3101とにも関連があります。白人においても同じような関連があると報告されています。私どもが集めた患者さんの中でも、HLA-B*1511を持っている患者さんとHLA-A*3101を持っている患者さん、両方がいらっしゃいました。ですから、カルバマゼピンに関していえば、なぜか白人と日本人が似ていると言えます。

アロプリノール誘因性SJS/TENについては、比較的万国共通のマーカーでありますHLA-B*5801を持っている方が半分ほどいました。ですから、日本人の場合には、SJS/TENの遺伝子マーカーについては白人と比較的よく似たパターンをとっているということがいえると思います。

●症例の集積方法について

ここで、研究班では、どのように患者さんにご協力いただいているかについて、お話ししたいと思います。まず、研究班に参加されている臨床医の先生方を通じて、患者さんの血液と診療情報を集めています。しかし、狩野先生がおっしゃったように杏林大学のような大きな病院でも、10年間に25人くらいの患者さんしか受診しないという大変稀な病気ですので、研究班の先生方に協力をお願いするだけでは、結論を導くだけの症例数を集積することができません。

そこで、研究班では、全国のSJS/TENを発症した患者さんを対象にした、症例集積ネットワークを構築しました。通常は、主治医から製薬企業に連絡をいただき、製薬企業から私どもに、協力の申し出があったという報告をいただいています。患者会の方々でも、(このようなルートで)すでにご協力いただいた方もいらっしゃるかもしれません。SJS患者会の皆さんにご協力いただく場合には、通常とは違うルートになりますので、患者さんのプライバシーの保護をどう守るかということも含めて、現在、どのような形でご協力いただくかについて、研究所の中で検討している段階です。決まりましたらホームページに発表したいと考えています。

これまでのところ、遺伝子マーカーがわかったのはカルバマゼピンとアロプリノールについてだけです。その他の原因薬物がどの遺伝子マーカーと関連しているかについては、もっと調べていかなければいけませんので、可能ならば、患者会の皆さんにもご協力をいただくことができればと考えています。

●前向き試験について

このような遺伝子マーカーがわかってきたら、本当に、SJS/TENなどの重症薬疹を防ぐことができるか、ということが次の問題になります。これは、前向き試験で検証することができます。その例を紹介します。

アバカビルは、HIV感染の治療薬で、重症薬疹を発症しやすい薬のひとつです。アバカビルはHLA-B*5701を保有している方が、重症薬疹を発症しやすいということがわかってきました。そこで、新たにアバカビルの治療が必要になった患者さんを対象に、遺伝子検査の有用性を検討する試験が行われました。2千人ぐらいの主として白人の患者さんが参加した試験です。

まず患者さんを二つのグループに分けます。一方の群は、治療開始前にHLA-B*5701を保有しているか否かの検査をします。そして、HLA-B*5701の非保有者にはアバカビルを投与し、HLA-B*5701の保有者にはアバカビル以外の薬を投与しました。もう一方の群には、治療開始前にHLA-B*5701保有の有無の検査を行なわず、全員にアバカビルを投与しました。そして、6週間後に二つのグループの重症薬疹の発症率を比較しました。

その結果、治療開始前にHLA-B*5701の保有の有無を検査した群では、重症薬疹の発症者はゼロでした。一方、治療開始前に検査を行なわなかった群では、重症薬疹の発症者が22例(3.1%)あったということでした。そして、発症者全員がHLA-B*5701を持っていることが、後でわかりました。

このように、アバカビルで治療を開始する前に遺伝子マーカーでスクリーニングを行うと、重症薬疹の発症を防ぐことに効果があるということが示されました。

●まとめ

遺伝子マーカーが明らかになった原因薬物は、まだ三つ程度です。将来、もし、いろいろな薬物について遺伝子マーカーが分かると、患者さんが病気になって病院に行ったとき、薬で治療を開始する前に、まず遺伝子検査を行ないます。その検査の結果を見て、Aのタイプの遺伝子を持っている方には薬Aを投与し、Bのタイプの遺伝子を持っている方には薬Bを投与するということが可能になります。私どもは、このような個別化医療ができればいいなと考えて、研究を続けています。

どうも、ご清聴ありがとうございました。

研究班講演3:上田真由美(同志社大学生命医科学部)

●自己紹介

京都府立医科大学で角膜専門外来とスティーブンス・ジョンソン外来を担当しております上田真由美です。京都府立医科大学では客員講師ですが、京都府立医科大学から同志社大学に出向しており、同志社大学では准教授をしています。外園先生は前からSJS患者さんを、木下教授と診てこられていますが、私は10年ぐらい前から入れていただいております。SJS患者さんを診て、「なんでこんな病気が起こるのだろう」、「予防できないのかなあ」と思いながら、患者さんを診せてもらって、研究もさせていただいています。

●環境因子と遺伝的要因

遺伝子解析には、鹿庭先生が話されたHLAの他に、遺伝子多型解析があります。一般的に病気は、環境因子で起こるものと、遺伝的要因が関わって起こるものとがあります。環境因子だけで起こるものは、交通事故による外傷などです。自分とは関係なく予期せぬことで起こるものは、100%が環境因子です。遺伝的要因によるものが、遺伝性疾患です。親から子へ遺伝するもので、一つの遺伝子で規定されている病気です。

しかし、多くの病気は、その間に存在します。遺伝的な素因はあるけれど、それだけでは発症せず、いろいろな環境因子が加わって起こるというのが、多くの病気の病態だと考えられています。これは、多因子疾患と呼ばれます。有名なのは、生活習慣病である糖尿病や高血圧で、素因と環境因子が関係して発症するといわれています。

スティーブンス・ジョンソン症候群は、薬剤やウイルス感染など環境因子によることが多いのですが、同じように薬を飲んでも、発症する人としない人がいるということは、患者さんの体質もある程度関わっている可能性があると考えています。つまり環境因子がたくさん重なっても、遺伝子素因がなければ発症しにくく、遺伝子素因があれば発症しやすくなると考えています。

皮膚科や外国の報告では、SJSは、てんかんのお薬や、痛風の薬であるアロプリノールによる発症が多いとされています。また、世界的にてんかんと痛風のお薬については、それぞれ遺伝子解析がされており、ある一定のHLAが発症に強く関係するということがわかっています。

私は眼科医ですので、眼に合併症がある患者さんを主に診察しております。眼に症状が出ない患者さんはほとんど診ることはありません。この眼に合併症がある患者さんを対象に、何年前からか細かく問診させていただいています。その結果、重症ドライアイや視力障害を伴う患者さんは、約80%の人が風邪薬で発症しているということがわかってきました。眼合併症のある患者さんの中で、てんかんのお薬で発症していると考えられる患者さんは、わずか5%でした。また、他科からの紹介で眼合併症を伴わない患者さんを診察させていただくことがありますが、痛風のお薬で重篤な眼合併症を生じている患者さんはおられません。このように、眼に合併症が生じるSJSの発症には、風邪薬が大きく関与していることがわかってきました。

さらに、私たちが診せていただいている眼に合併症を伴うSJSは、一つのHLA型や一つの遺伝子だけではなく、多くの遺伝子多型ならびにその組み合わせが、その発症しやすさに大きく関与していることが、調べれば調べるほどわかってきましたので、本日、お話しさせていただきます。

●SJSのHLA

スティーブンス・ジョンソン症候群の患者さんで、眼に症状が出る人は、大体6割ぐらいです。その約80%は、風邪薬が原因です。私は、この眼に合併症がでた患者さんを対象にHLA解析と遺伝子多型解析をさせていただいています。

その結果、眼に合併症がでるSJSの発症にHLA-A*0206が強く関係していることがわかってきました。眼に合併症がでた患者さんのうち、HLA-A*0206を持っている方は約半数でした。一方、発症していない人では約15%の人だけがHLA-A*0206を持っていました。このようにSJS患者さん全員がHLA-A*0206を持っているわけではなく、また、HLA-A*0206を持っていたら必ずSJSを発症するわけでもありません。しかし、HLA-A*0206を持っている人は、持っていない人に比べて5倍SJS発症が発症しやすいということがわかりました。SJSは元々発症率がとても低いので、この5倍という値がどれぐらい意味があるかはわかりません。よりSJSの発症予測や早期診断に役立つものが見つかればよいと思い、研究を続けています。

●遺伝子多型について

HLAの型は親から子供に遺伝します。つまり、お父さん、お母さんが持っている HLAの型が子供に伝わります。しかし、皆さんもご存じのとおり、SJSは遺伝性疾患ではありません。患者さんの家族が発症したというお話は聞いたことがありません。よって、皆さんに採血をお願いするとき、必ず「これは遺伝性疾患ではないですから」という説明をします。遺伝子といえば子供に遺伝すると考えられ、子どもは大丈夫ですかと皆さん不安がられます。でも、様々な病気に関わっている遺伝子多型は必ずしも遺伝するものではありません。

遺伝子が親から子どもに伝わるときにたまたま変わりやすい場所があることがわかってきています。皆さんの体の中に、A、T、C、Gという塩基があって、これが自分の体がどのように作られるかという設計図になっています。このうち99%は隣の人と同じです。残りの1%の部分で、顔や体質、病気になりやすさの違いが決まってくると考えられています。この1%の中で、大体300から400個の塩基の間に、親から伝わるのではなく個々人で変わりやすい場所があるということがわかっています。この部分を遺伝子多型といいます。

親から子供に遺伝子が伝わるときに、遺伝子多型の部位が何になるかは誰もわかりません。ただ、どう変わったかが、いろいろな体質に関わっていると考えられています。また、その体質で病気になりやすさが決まっているのではないかというのが、今の、世界的な考えです。現在、いろいろな施設で様々な病気について、世界的に遺伝子多型の解析がされています。

●府立医大での研究結果

京都府立医科大学眼科では、現在約150名の患者さんから採血させていただいています。その血液から遺伝子を抽出して調べた結果をお話しさせていただきます。

私は、遺伝子解析を始めたころは、一つの遺伝子がSJSの発症に関係しているのだろうと思っていました。しかし、調べてみるとたくさんの遺伝子が関与していることがわかってきました。初めに、HLA型のひとつであるHLA-Aの0206が関係しているということがわかりました。その他に、自然免疫に関係するTLR3(Toll-like receptor 3)や、アレルギーに関係するといわれているIL4R(Interleukin-4 receptor)など、いろいろな遺伝子が出てきました。これにはびっくりしましたが、だんだん考え方が変わってきました。

このあいだ、外園先生とテレビに出させてもらったのは、このたくさん出てきたSJS関連遺伝子の中のHLA-A*0206とTLR3に着目して解析した結果が大変意味のあるものだったからです。HLA-A*0206を持っている人と持っていない人とでは、SJSの発症率が5倍変わります。TLR3のある遺伝子多型を持っている人と持っていない人とでは、発症率は6倍変わります。さらに、この両方を持っている人は、発症しやすさが47.7倍に上がることがわかりました。詳細を表に示します。患者さんでは。110人中11人(10%)がこの両方の型を持っていました。数がさらに増えるとわかりませんが、現在、発症していない人では220人の中、この両方を持っている人は0人です。つまり、この二つの型を持っている人はかなり高率に眼合併症を伴うSJSを発症すると考えられます。もし、発症していない人でこの二つの型を持っている人がいたら、「あなたSJSを発症する可能性が高いですよ」と言ってあげるべきだと思っています。

まだ解析は進行中であり、先ほどお示しした遺伝子以外にもSJS発症と関連する遺伝子が複数出てきています。一つ一つの遺伝子は、発症しやすさが5倍や4倍に上昇します。SJSは大変まれな疾患ですので、4倍発症しやすいといっても、どれだけ意味があるかどうかはわかりません。しかし、見つかってきた複数の疾患関連遺伝子を組み合わせることによって、広範囲の発症しやすい方に対して、発症を予測したり、早期診断に役立てることができる可能性があると考え研究を継続しています。

●まとめ

この人はSJSを発症しやすいということが前もってわかっていれば、「あなたはSJSを発症しやすいから気をつけてください」と言うことができます。また、どうしても薬を飲まないといけないときでも、SJSを発症するかもしれないと自分でわかっていれば、万が一SJSを発症しても、直ちに病院に行って医師に「自分はSJSを発症しやすいといわれています。」と伝えることができ、直ちに適切な治療を受けることができると考えられます。その結果、合併症が少なくてすむ可能性があると考えています。

外園先生が急性期のSJSの治療のことを調べていて、早めに治療をすると合併症が抑えられるということがわかってきています。

自分の行っている研究が、少しでも患者さんの役に立ってくれればと思い、研究を続けています。「なんでこんな病気が起こるのだろう」「予防できないのかなあ」という、研究を始めたときの気持ちは今も変わっておりません。今後とも、ご協力よろしくお願いいたします。