SJS/TENと眼障害
重症薬疹のひとつであり、全身性の皮膚粘膜疾患である。突然の高熱、結膜炎とともに、全身の皮膚・粘膜にびらんと水疱を生じる。急性期の眼合併症率は約60-70%と報告されており、そのうちの約半数が角結膜の上皮欠損や偽膜形成等の重篤な眼合併症を生じている。すなわち、SJS/TENと診断された患者の約3分の1が、急性期に重篤な眼合併症を生じ、慢性期に高度ドライアイや視力障害等の後遺症を残す。最悪の場合は失明に至ることもある。
眼科で診療されるStevens-Johnson 症候群(以下SJS)には、皮膚科で診断されるSJSとTENの両方を含み、かつ、重篤な眼粘膜障害を伴った症例だけが含まれる。
眼科で診療するSJSは、皮膚科で診断されるSJS/TENの一部であるということである。
皮膚科では、急性期の表皮剥離の範囲により10%未満をSJS、10%以上を中毒性表皮融解症(以下TEN)と診断する。慢性期には皮膚病変は消褪しているため、慢性期の患者の所見から、SJSとTENの区別はできない。
一方、眼科を受診するSJS/TEN患者は、慢性期の状態であることが多く、急性期の表皮剥離の程度を知ることは難しい。そこで眼科では、急激に発症した発疹と粘膜病変の既往、ならびに、診察時に観察される重篤なドライアイ、睫毛乱生、瞼球癒着などの慢性期SJS/TENに特徴的な眼所見をもとに、SJS/TENを合わせて広義のSJSと診断することが多い。
慢性期に眼科を受診するような重篤な眼後遺症を生じるSJS患者は、皮膚科でSJSあるいはTEN と診断される患者のうちの一部である。SJSの診断には粘膜病変は必須であるが、TENの診断には粘膜病変は必須ではない。さらに、粘膜病変を生じる症例のすべてが、重篤な結膜炎を発症するわけではない。
眼科医と皮膚科医の共同調査では、急性期に偽膜形成ならびに角結膜上皮欠損を伴う重篤な眼合併症を伴う症例は、SJS/TEN全体の約40%であった。