医薬品副作用被害救済制度(医薬品副作用被害救済制度.眼科研修ノート.435-438、東京:診断と治療社.2009.)より改変して記載
- 医薬品の副作用による健康被害に対して適用される。
- 入院が必要な程度の疾病や障害などの健康被害が対象
- 医療費、障害年金等が支払われる。
- 医療費および医療手当の請求には期限がある。
1.医薬品副作用被害救済制度とは
医薬品を適正に使用したにもかかわらず、副作用による健康被害が生じることがある。そのような健康被害に対して医療費等の給付を行い、被害者の救済を図る制度が「医薬品副作用被害救済制度」である。入院が必要な程度の疾病や障害などの健康被害が対象とされ、医薬品としては病院・診療所で投薬されたものだけではなく、薬局で購入したものも含まれる。
法律(医薬品医療機器総合機構法)に基づく公的な制度であり、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(以下、機構)によって運営される。救済業務に必要な費用は、医薬品の製造販売業者から納付される拠出金によって賄われている。(医薬品副作用被害救済制度)
2.対象となる疾患
Stevens-Johnson症候群と中毒性表皮壊死症は発症前に薬剤投与歴のある症例が多く、重篤な薬剤副作用としても扱われる。後遺症として最も多いのが眼障害(視力障害、ドライアイ)であることから、眼科ではこれらの疾患に対する診断書を記載することが多い。
3.給付の種類
給付には、疾病に対する医療費、医療手当、障害に対する障害年金、障害児養育年金、死亡に対する遺族年金、遺族一時金、葬祭料の7種類がある。生じた障害が重篤な場合(政令で定める1級又は2級)には、障害年金および障害児養育年金が支給される。
4.請求の期限
給付の種類に応じて、請求の期限が定められている。医療費が請求できるのは、対象となる費用の支払いが行われたときから2年以内であり(平成20年5月1日以後に行われた費用の支払いについては5年以内)、医療手当は、請求に係る医療が行われた日の属する月の翌月の初日から2年以内である(平成20年5月1日以後に行われた医療については5年以内)。
5.申請の手順
給付の請求は、健康被害を受けた本人(又は遺族)等が、請求書と添付資料(医師の診断書等)を機構に送付することにより行う。請求にあたっては、重篤な健康被害が医薬品の使用によって生じたことを証明しなければならない。このため、副作用の治療に関わった医師の診断書や投薬証明書が必要となる。請求者は、それらの書類の作成を医師に依頼し、請求者が記入した請求書とともに、機構に提出する。
6.診断書の記載について
診断書は「発症したときの症状および経過と、それが医薬品などを使用したことによるものだという関係」を証明するものであり、医薬品と健康被害との因果関係、副作用に対して行った治療を記入する。
障害年金・障害児養育年金の診断書(視覚障害用)を例に述べると、「(6)使用された医薬品」の欄(図2①)には、発症の原因として疑われる薬剤、生じた副作用に対して用いた薬剤を記載する。「(10)-1)(6)の医薬品を使用するに至った経緯」の欄(図2②)には発症までの症状や検査所見の推移、薬剤使用の理由などを記載、「(10)-2) その後の経過」の欄(図2③)には発症後の経過と治療内容を記載する。皮膚科あるいは内科など副作用に関わった主たる診療科において、(6)および(10)-1)に詳細を記載することが多く、眼科では主に眼所見と眼科的治療について記載する。継続申請では、(6)および(10)-1)は省略して「(10)-2) その後の経過」に前回の診断書以降の経過を記載する。
副作用を生じた薬剤を処方した医師が、訴訟になることを懸念して、診断書の記載を断ることがある。薬剤副作用を被ったことに加えて、被害救済してもらえないという2度目の不利益を被らないように、誤解のない対応が望まれる。
疾病(入院を必要とする程度)について医療を受けた場合 | 一定程度の障害(日常生活が著しく制限される程度以上のもの)の場合 | 死亡した場合 | ||||
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医療費 | 医療手当 | 障害年金 | 障害児養育年金 | 遺族年金 | 遺族一時金 | 葬祭料 |